コウノトリの生態

和名 コウノトリ(二ホンコウノトリ) 分類 コウノトリ目コウノトリ科
英名 Oriental White Stork (Oriental Stork) 学名 Ciconia boyciana

分布
生息数

 ロシア極東地域及び中国東北部で繁殖し、中国の長江中流域、台湾、韓国、日本などで越冬します。越冬地としては、中国のポーヤン湖(Poyang Lake)が有名です。かつては日本や韓国でも繁殖していました。IUCN(国際自然保護連合)の推計では、世界全体の成熟個体数が1,000羽~2,499羽とされています。

大きさや
特徴

 両翼を広げると200㎝~220㎝(翼開長)、体重は4~5kgです。羽の色は、風切羽と肩羽、初列雨覆、大雨覆、小翼羽が黒く、その他は、真っ白です。鳴管を動かす筋肉が発達していないため、鳴き声を出すことができません。そのため、クラッタリングという、上下の嘴をカスタネットのようにたたき合わせて音を出す方法で、コミュニケーションをとります。

性別

 雌雄による外見上の違いはありませんが、一般的には、オスがメスよりやや大きいです。確実に判定するためには、羽毛や血液を採取し、DNA検査を行います。

寿命

 国内の野外での寿命は、2005年の放鳥以降の歴史が浅いためまだわかっていませんが、飼育下では30年以上生存する個体もいます。

食性

 湿地に生息する肉食の鳥で、フナやドジョウなどの魚類、ヘビやトカゲなどの爬虫類、カエルなどの両生類、バッタやイナゴなどの昆虫類、ネズミなどの小型哺乳類などを捕食します。

繁殖の基礎情報

 繁殖期は2月頃~7月頃までで、この間に造巣→交尾→産卵→抱卵→フ化→育雛→巣立ちという経過をたどります。国内では、かつては、高木の樹上で営巣していましたが、営巣に適した高木がほとんどなくなった現在では、人工巣塔をはじめ電柱や鉄塔などの人工物の上で営巣しています。巣の大きさは、直径150~200㎝です。一腹卵数は、普通2~5個で、抱卵は雄雌交代で行います。抱卵開始から30日あまりでフ化し、フ化したヒナはおよそ70日で巣立ちます。
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国内でのコウノトリ保全の歴史

江戸時代 全国各地にコウノトリが生息していたとの記録がある。
明治時代 一般人も狩猟が可能となったため、乱獲されて個体数が減少する。
1921年(大正10年) コウノトリの繁殖地として、兵庫県出石郡出石町の「鶴山」が国の天然記念物に指定される。
1939年~1945年
(昭和14年~20年)
コウノトリの営巣に適したマツの高木が伐採され、営巣場所が減少する。
1950年・60年代 強力な農薬の使用や環境改変により餌生物及びこれらを食うコウノトリが負の影響を受け、野生コウノトリの個体数は激減する。
1952年(昭和27年) 兵庫県養父郡伊佐村の「伊佐のコウノトリおよびその繁殖地」が国の特別天然記念物に指定される。
1953年(昭和28年) コウノトリの特別天然記念物の指定が、「生息地」から「種」に変更される。
1955年~1964年
(昭和30年~39年)
減少の一途をたどるコウノトリを保全するため、「そっとする運動」「どじょう一匹運動」など官民一体の保護活動が展開される。しかし個体数の減少に歯止めはかからなかった。
1965年(昭和40年) 12羽にまで減少したコウノトリを保全するため、兵庫県は、2月11日に1つがいを兵庫県豊岡市内で捕獲。コウノトリ飼育場(現兵庫県立コウノトリの郷公園附属飼育施設コウノトリ保護増殖センター)で人工飼育が開始される。
1971年(昭和46年) 兵庫県豊岡市内で野生最後のコウノトリが保護された後に死亡し、国内のコウノトリ繁殖個体群が絶滅する。
1988年(昭和63年) 東京都多摩動物公園が国内で初めてコウノトリの繁殖に成功する。
1989年(平成元年) 兵庫県のコウノトリ飼育場でも繁殖に成功する。
1990年(平成2年) 社団法人日本動物園水族館協会により、国内で飼育されているコウノトリの国内血統登録が開始される。
1995年(平成7年) 世界動物園水族館協会(WAZA)により、世界各地で飼育されているコウノトリの国際血統登録が開始される。
1999年(平成11年) コウノトリの野生復帰を目的として兵庫県立コウノトリの郷公園が開園する。
東京都多摩動物公園から韓国教員大学への受精卵輸送が成功する。
2002年(平成14年) 兵庫県立コウノトリの郷公園の飼育個体数が100羽を超える。
2005年(平成17年) 兵庫県がコウノトリ5羽を野外に放鳥する。(再導入・野生復帰の開始)
2007年(平成19年) 兵庫県豊岡市内の人工巣塔で、放鳥後初めての野外繁殖が確認される。
2013年(平成25年) 「コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネル」が設立される。
2015年(平成27年) 福井県と野田市(千葉県)が放鳥事業を開始する。また、韓国でも放鳥が始まる。
2017年(平成29年) 近畿地方北部(兵庫県豊岡市及び京都府京丹後市)以外の徳島県で、初めて繁殖が確認される。また、野外個体数が100を超えるとともに、再導入開始後12年にして、国内全都道府県でのコウノトリの飛来が確認される。
2020年(令和2年) 野外個体数が200を超える
2022年(令和4年) 野外個体数が300を超える。コウノトリの繁殖が全国7府県で確認される。